INTERVIEW

大人でも子どもでもない。狭間で格闘する少年のひと夏の記憶ー「メモリーズ・オブ・サマー」

2019-06-03

 

ポーランドの小さな町に住む、少年・ピョトレックの夏休みを描く「メモリーズ・オブ・サマー」
主に描かれるのは、母親と息子について。揺らぐはずのないふたりの関係が、母親の「浮気」という裏切りによって壊れていきます。

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© 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódź -Miasto Kultury w Łodzi

 

監督は、ポーランド出身のアダム・グジンスキさん。自伝ではないものの、自らの経験をもとにオリジナルの脚本をつくられたそうです。
光栄なことに、先日インタビューする機会をいただいたので、作品に関してお話を伺ってきました。

 

ーなぜ、「母と息子」を題材に選ばれたのでしょうか?

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グジンスキ監督:子どもにとって母親は、初めに信頼を置く存在です。その関係の中から、自分自身について、そして他者との関わり方を学んでいきます。私自身いま子どもがいますが、やはり母子の関係性はとても興味深いと考えます。

子どもは親を100%頼って生きている。しかし「それを信頼していいのか?」というという疑問が生じる試練の瞬間が、子どもの成長過程には必ずあると思います。
この物語の中で、ピョトレックは母親への希望と、母親からの裏切りという現実の狭間で格闘するのです。

 

ーピョトレックを、12歳に設定にした理由はありますか?


子どもと大人の間の存在として、ピョトレックを描きました。彼はまだ、自分の考えや大人の難しい感情を理解できない年齢なんです。もう2歳上だったら「どうして夜出かけるの?」とお母さんに聞くことができる。しかし、彼はまだ、何が起こってるのかを完全に理解することができません。何か悪いことが起こっているという意識はあるけれども、それを名指しできないのです。


映画の最後で、彼はようやく母親と対峙することができるようになります。この夏休みを通して、ピョトレックは急速に大人になっていくんです。

 

ー1番思い入れのあるシーンは、どこでしょうか?


母親がピョトレックにシーツの端を持たせ、お互いに引っ張り合うシーンです。
「私を裏切らない?」と、母親はある種の脅迫を息子に行います。母親が、麻薬中毒のようなかなり病的な状態であることをあの場面で表現していて、そんなことをされてもピョトレックは彼女を諦めきれない。
残酷ではありますが、この作品に欠かせない大切なシーンです。

 

目を離した隙に溺れてしまった少年を描くことで、何を表現したのですか?

「自分が見ていなかったから、彼は溺れてしまった」と、ピョトレックは罪の意識をずっとどこかに抱いていました。しかしその少年は実は生きていて、遊園地で再会します。この場面は、父親が家庭に戻り「崩壊しかけていた家庭を再建できるかもしれない」と、ピョトレックは「希望」を抱いている時ですよね。
そこで「少年の蘇り」という出来事を通して「家庭の再生」ということを表現したかったんです。

 

ーさいごに、監督が映画に魅せられる理由を教えてください

第一に、個人的に感じていることを表現することができる。それと同時に、観客とコミュニケーションがとれることです。
人々が私の映画をどう観てくれているのかを知るのは、とても好きです。この作品は、ポーランドの少年のお話ですが、例えばこれから日本のみなさんがこの映画を見て、国境を越えて、同じようにこの作品を感じ取ってくださる。それはとても嬉しく、素敵なことです。

 

監督が語ってくださったように、この映画はとても作家性の強い、個人的な作品だと思います。
監督は、この物語自体に共感を求めているというよりは「母と子の関係」「12の歳の視点からみえる、感受性豊かなビビッドな世界」など、誰もが体験したことのあるであろう、普遍的なことを伝えているのだと思います。

「これからまた、お母さんとうまくやっていけるだろうか?」
ラストシーンでは、ピョトレック自問する姿を通し、観客に問いかけているとおっしゃっていました。
亡霊のように列車の向こうに佇むピョトレックの表情は、不安と絶望の中にありながらも、なんとか前を向くことを決意したように、私の目には映りました。

 

やるせなくもどかしい少年のひと夏の成長を、青春の輝きとともに美しく描く本作。
たくさんの人に届いてほしいと思います。

 

 

 

6月1日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

 

 

© 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódź -Miasto Kultury w Łodzi

Credit
監督・脚本:アダム・グジンスキ
撮影:アダム・シコラ
音楽:ミハウ・ヤツァシェク
録音:ミハウ・コステルキェビッチ
出演:マックス・ヤスチシェンプスキ、ウルシュラ・グラボフスカ、ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ

原題:Wspomnienie lata /2016年/ポーランド/83分/カラー/DCP
配給:マグネタイズ
配給協力:コピアポア・フィルム